INAKA談話ブログ

時間があるときに趣味や自作小説や雑談など書きます

【短編ホラー小説】みかんいりませんか?

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 ※これはフィクションである

 これは冬の時期、仕事終わりの帰宅途中での出来事であった。私は仕事を17時に終わらせ、いつも通りの道を歩いて帰宅した。私の帰り道は一旦人通りの多い道に出ないと家に帰れない。

「今日も疲れたな~。早く家に帰ってビールでも飲んで久しぶりにゲームでもやりたいな。」と私は帰宅を急いだ。

 私は人通りの多い道に出た。周りには私と同じ帰宅途中の人や集団で喋りながら歩いている学生たち、いつもと変わらない光景だった。

『今日カラオケ行こうぜ!』『居酒屋でも行って酒でも一杯飲みに見に行こう!』『いらっしゃいませ』などあちらこちら色んな人の声が聞こえる。私は人混みに紛れて歩いた。・・・

 私は店が多く並ぶ道を歩いた。すると視線の先にはカゴを持って何かを売っている少女を見た。私が見る限り少女の姿は大体10歳くらいの歳でボロボロの服を着ていた。近くには親らしき姿は見えず一人で何かを売っていた。少女は

「みかんいりませんか?みかんいりませんか?」と歩く人に声をかけていた。その時私は

「こんな冬の時期に女の子一人が売っている姿なんておかしくないか。親はどうしたんだ。」と私は思った。私は立ち止まってその少女に近づいた。近づいてみると少女は私に気づき、私に向けて

「お兄さん、みかんいりませんか?」と言った。

私は心のなかで「なんかこの少女が童話に出てくるマッチ売りの少女みたいだ」と思った。私は少女に

「君、親はどうしたの?どうしてみかんなんか売っているの?」と聞いた。少女は

「お金がないの」と一言だけ私に言った。私は少女がかわいそうに思い

「みかんはいくらするの?」と値段を聞いた。少女は

「100円です」と言った。私はその安さに驚いたが少しでも生活の足しになればと思い

「10個ください。」とみかんを買うことにした。

「ありがとうお兄さん。」と少女はお礼を言いカゴからみかんを出した。しかしそのみかんは私が知っている果物のみかんではなく缶詰だった。私は不思議に思ったがその缶詰はどこにでも売っているような缶詰だった。

 私は缶詰をかばんの中に入れた。かばんはパンパンになってしまったが、その少女はみかんが売れたことに円満の笑顔だった。みかんを買った私は急ぎ足で家に帰った。

 私は家に帰り、すぐにビールを冷蔵庫から出した。その時私は買ったみかんも一緒に食べようとかばんの中から缶詰を出した。私は引き出しにあった缶切りを出し缶詰を開けた。缶詰を開けた瞬間  

「うっ!何だこの匂い。なんか腐っている匂いがする。」私は恐る恐るその缶詰を開けた。開けた時その中身はみかんではなく何かの肉が入っていた。

 「あの少女は一体何を売っていたんだ。」

私は少女の言っていた「みかん」という言葉に気になった。それと同時になぜ少女の親はいなかったのか考えた。

「あれは果物のみかんではなく、親の”肉”とそれをを入れた”缶詰”を合わせて”みかん”と言ったのではないのか。」と。

 次の日私はまた帰り道に少女を見た。少女は昨日と同じ格好と同じカゴを持ち

「みかんいりませんか?みかんいりませんか?」と歩く人に声をかけていた。

一体少女は何者なのかそしてその缶詰は何なのか私には分からない。