INAKA談話ブログ

時間があるときに趣味や自作小説や雑談など書きます

【自作小説】「私の影」第六話 子犬と私 後編

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 「くすぐったいな~。」

私は目を開けると昨日の子犬が私のほっぺたをなめていた。それと同時に締め忘れていたカーテンから出る太陽の光と太陽で作り出された子犬の影が私を直接浴びせた。外を見ると朝になっていた。時計を見ると6時になっていた。

「やばっ!今日も仕事ある~!」

いつもなら寝る前に目覚し時計を設定するのに忘れていたが、子犬のおかげでいつもと同じ時間で起きることができた。

「ありがとう。えっと・・」私は子犬、子犬と言うだけで名前を付けていなかったから少し戸惑った。

 私は子供時代を思い出した。私は小学校5年生の時、犬を飼っていた。その時の犬も今みたいに捨てられていた犬だった。当時の私はその犬を可哀想だと思い自分の家に連れ帰り、どうにかして飼ってもらおうと親に相談した。親は突然のことに最初は反対していたがなんとか頼んで飼うことになった。その犬は色が黒だったので名前は単純だったが「クロ」とつけた。私はほぼ毎日学校が終わると一番に校舎を出てクロと遊んだ。得に外でボール投げで遊んだ時、投げたボールを全力で追いかけるクロの様子はまるで自分の影も置いていくほど楽しんでいた。しかしクロは私が15歳の時に病気で死んでしまった。病気の発見が早ければ治ってたと獣医は言っていた。

「私に病気を治せる力があったら助けれたのに!」とクロの死を自分のせいだと嘆いていた。

 そして今あらためて子犬を見るとあの時のことを思い出し私の目に涙が出ていた。

 すると、子犬が「ぺろっ」と私の涙をなめた。

「慰めてくれるの?ありがとう」私は子犬の頭をなでた。

起きた時にあった太陽はさっきまで雲に隠れていたがしだいに雲が遠ざかりまた太陽が現れ、私と子犬を照らした。太陽は私達を照らすと同時に影も一緒に作った。

その時、私は子犬の影がクロの姿に見えた。クロがこの子犬に生まれ変わったのではないかと思った。 私は決心した。

「私と暮らさない?」と私はまた頭をなでて子犬に言った。

 子犬は円満な笑顔でしっぽを振っていた。私は子犬に名前をつけた。クロの時は毛の色が黒色だったから「クロ」とつけたがこの子犬の毛は白色だったので子犬に「シロ」とつけた。

  そしていま現在シロの影を見るとそれが幻なのか分からないが、時々シロの影が「クロ」の姿に見え、私のそばにいる気がした。同時に一人暮らしの私を待ってくれる家族ができたことに嬉しさを隠せない自分がいる。