【自作小説】「私の影」第五話 遊び
影はいつも私についてくる。時に影は遊びの一つにもなる。
「最初はグーじゃんけんぽん!」僕はジャンケンに負けて鬼になった。
僕は「まじか~」と心のなかで叫んだ。
「逃げろー」と学校の外を範囲として周りの人たちは逃げ回った。
今日は昼休みにクラスのレクリエーションで影踏み鬼ごっこをやっている。影踏み鬼ごっこは鬼が逃げ役の影を踏めば踏んだ相手が次の鬼になる遊びだった。
僕は鬼役が苦手だった。走るのが遅く、前にも鬼ごっこで鬼役になったとき一人も捕まえられず、逃げ役がわざと捕まってくれたことがあった。逆に僕が逃げ役になってもすぐに鬼に捕まってしまう。僕は鬼ごっこ自体が嫌いだとその時実感した。
そして今僕は鬼役として逃げ役を追いかけている。
「早く鬼役やめたい~。」
僕は1秒でも早く逃げ役になりたく、逃げ役の人が近くにいたらできる限り全力で影を踏みに行った。
しかし、僕のクラスは走るのが早い人が多く僕が追いかけるとすぐに逃げてしまう。僕はすぐ追いかけるのを諦めその場で立ち止まった。
「はぁはぁ」と切らした息を整えながら逃げる人を睨んだ。その後も近くの人を狙いに追いかけたが影を踏むことができなかった。僕以外も鬼役になった人はいたがすでに鬼役から逃げ役になっていた。最初から鬼役なのは自分一人。
僕は、「影を踏めばいいのになんで捕まらないんだ。影だけ逃げないでくれたら足の遅い自分も捕まえることができるのに」とアリもしないことを独り言のように口に出した。自分より遅い人はいるが、その人はもう鬼に影を踏まれていて、鬼役になっていた。
15分くらいたち、まだ鬼役の自分は追いかけることをほとんど諦めていた。
その時、同じ鬼役の人が来た。さっき言った自分より遅い人だった。
僕は「やぁ、どうやったら逃げる人の影を踏めるの?」と言った。
その人は「僕たちは一人ひとりが遅いから影を踏めないんだ。だったら二人で一人を追い込めば踏めると思うんだけど。組まない。」
僕はその人が言っていた「二人で」がピンときた。
「そうか、一人ではなく二人でかぁ。いいね」とその話に乗った。僕たちは少し遠かったがその中でも一番近い人をターゲットにした。
組んだその人は「ハサミ打ちで行こう」と言った。
外にあった時計を見ると後5分だったが、一人で追いかけているときと比べると気持ちが強くなった。
ターゲットにした人はクラスの中で一番早い人だった。その人は僕たちが近くに来ても、余裕を見せていた。それを見た僕は余計にやる気が出た。チャンスは一回だと思い全力で踏みに行った。僕の反応にビビったかターゲットは逃げ始めた。
だけどターゲットが逃げるときにはハサミ打ちができる距離で、ターゲットは僕たちをかわそうとしていた。ターゲットは僕を前に来た時後ろへ振り返り走った。振り返った先には組んだ人が待っていた。その瞬間僕の方に影が向いた。僕はその一瞬の見逃さずに影を踏んだ。
それと同時に『キーコーンカーンコーン』と昼休みのチャイムが終わった。
捕まえて終わってしまったがそれが初めて自分が逃げ役を捕まえた瞬間だったこともあり、僕は今までにないガッツポーズをした。